日常的にサーバーやコンテナでLinuxを利用している人間であっても、デスクトップOSとしてもLinuxを利用している人は少ないのが現状です。“Linuxデスクトップ なぜ” で検索すると、上位に出てくる記事はLinuxデスクトップの普及に対して否定的な意見を述べたものばかりが並びます。

しかし、私は過去数年間、Linuxデスクトップを開発時に利用しており、その魅力やメリットを実感しています。そこで、この記事では、私が感じるLinuxデスクトップの利点を具体的に解説して見ようと思います。

手の内に収まるユーザー体験

私が好んで利用しているディストリビューションはArch Linuxです。これはKeep It Simpleを原則としたディストリビューションで、do-it-yourself な精神をユーザーにもとめています。そのため通常のインストール方法ではKDEやGNOMEなどのデスクトップ環境はもってのほか、初回起動時は vimnano などのエディタすら用意されていません。

https://wiki.archlinux.jp/index.php/Arch_Linux

でも、それで良いのです。私がいつも必要としているのはFireFoxとエディタと少しのコマンドラインツールだけであって、それらはインターネットにさえ繋がっていれば公式リポジトリからすぐに取得することができますし、依存するソフトウェアもインストール時にすべて表示されます。

そうしてセットアップしたOSは、全て私が求めたものだけで出来上がります。SystemdやLinuxカーネルについての基礎的な知識があれば、インストール後に追加するものはすべて自分が選んだもの。TikTokとかPrimeVideoとかFaceBookとかOneDriveとか必要ないわけです。これらを削除する手間も省けます。

セキュリティ性能・脆弱性

耐脆弱性についても特記すべき特徴の一つです。先述した通り、シンプルなディストリビューションを導入後は vimnano すら入っていません。導入されるソフトウェアが少ないということは、それだけ脆弱性やセキュリティーを意識する箇所を減らすことができるということです。

クリーンインストール後のWindowsであっても、多数のサービスが起動しているはずです。これらのサービスはWindowsを便利に使いやすくすることが目的ではありますが、一方で脆弱性の危険性をはらむものでもあるということを認識しなければいけません。

優れた開発体験

Linux(特にArch Linux)での開発体験は素晴らしいものです。パッケージマネージャは常に最新のランタイムやコンパイラを提供してくれます。開発で必要な言語が出てきたら、ただ pacman -Syu nodejs のようにコマンドを入力すれば次の瞬間から利用できるようになっています。

Windowsでは言語を導入するのにいちいちインストーラを取得してくる必要がありますし、それを自動更新してくれる仕組みもありません。WSLを用いることである程度Linuxマシンと同じことができますが、仮想環境特有のリソース効率の悪さやネットワーク周りの複雑さを考えるとまだ常用できる状態にはなっていないかな、と思います。

近年のmacOSは特に気に入りません。ダウンロードしたアプリケーションはデフォルトで警告を出し、Terraformはマルウェア扱い、通知もフォルダへのアクセスも全て許可を求めます。そして、これを無効化する方法がありません。WindowsのUACは管理者権限で無効化することができますが、macOSはそれがないのです。

痒いところに手が届く

Linuxでは多くの場合、思ったとおりに動作や見た目を変更することができます。デスクトップのバーの高さを何pxにするとか、バッテリー利用時のCPUの周波数を何GHzにするとか。

なにかをしていて、この動作は気に入らないと思ったとき。すこし検索すれば修正方法に出会うことができるでしょうし、もし修正ができなかったとしてもソースコードが公開されていれば自分で直すこともできます。

macOSではマウスカーソルの加速を無効にしながら速度を変更するのに有償のソフトウェアを使わなければいけません。


WindowsやmacOSは簡単で利用しやすいOSです。不要なソフトウェアや削られた設定画面、固定された動作に不満を覚えたことがないなら、もしかしたらあなたにLinuxデスクトップは合わないかもしれません。

Linuxデスクトップはシンプルですが、お世辞にも簡単に利用できるものではありません。システムの全体を理解しながら、自分の好みにあったものを自分自身で作り上げて行く必要があります。それを楽しめる人なら、WindowsやmacOSよりも利用しやすいOSを手に入れることができるでしょう。